不格好経営―チームDeNAの挑戦

不格好経営―チームDeNAの挑戦
南場 智子 (著)

DeNA創業者の南場智子さんの著書。
とても面白いです。1999年の会社設立から2011年の社長退任と現在までの足取りをプライベートにも触れつつ語っています。この本を読んだ感想は、南場さんは誠実でとても格好良い人でした。

この本で南場さんが語りたかったのは、DeNAの経営で失敗が多くあったことと、とても優秀な人材が集まっていたということかもしれません。

本文ではネットオークションのビッダーズや、モバイル向けのモバオク、モバゲーなどについて多くの失敗と成功があったことが書かれています。講演や就職活動者向けの説明会でよく話していている内容も含まれているようです。

また、本の中では多くのDeNA社員が登場します。社長時代に関わった色々な人が登場するので、この本を通してお礼の気持ちを伝えたいという意図もあったはずです。

ここ数年、DeNAの業績を気にしたことがなかったのですが南場さんの退任後もすごい成長をしていて驚きました。海外での売り上げやメインのソーシャルゲーム以外にも多くの事業をはじめていて大分勢いづいています。

著者の南場さんは以前DeNA本社があった笹塚で見かけたことがあり、迷惑だったと思いますが一言二言話しかけてみて、とても輝いている人だなーと思ったのが印象に残っています。この本でもその印象と変わらず全力で物事に取り組んでいる姿が垣間見えました。

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インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針
Susan Weinschenk (著), 武舎 広幸 (翻訳), 武舎 るみ (翻訳), 阿部 和也 (翻訳)

ウェブページやアプリケーションのインターフェースについて心理学的な知識をまとめた本。著者は学術論文を読むのが大好きという変わり者で、この本ではそれで得た気づきを分かりやすく紹介しています。

ソフトウェア開発者向けに書かれていますが、人と触れあうこと全般に言える話が多くあります。難しい論文を読むような面倒な作業をすることなく、記憶や決断といったことに関わる心理的な仕組みを知れて面白いです。

この本では書いてある内容だけでなく、見せ方や構成も工夫されています。文字量に対して本のサイズは少し大きめで、余白が広くとられていることで読み手にとっては馴染みやすい印象がありました。また、1トピック毎におさらいをまとめてあり、記憶に残りやすい工夫がされているようです。

1冊の本で100のトピックを紹介しているので、それぞれ数ページずつの紹介ですが、とっかかりとしては十分な説明がされています。ただの論文紹介ではなく実際にインターフェース設計をする際に気を付けるべきことの提案も多く含められていて仕事やそれ以外の場面でも活かせる良い内容の本です。

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安藤忠雄 仕事をつくる―私の履歴書

安藤忠雄 仕事をつくる―私の履歴書
安藤 忠雄 (著)

建築家で有名な安藤忠雄が日経新聞に連載していた「私の履歴書」というコラムをまとめて出版した本。著作は何冊か出ていますが、これしか読んでいないため他と比べてこの本が特筆して面白いかどうかは分かりません。
ただ、安藤忠雄が高卒で、大学を出てはいないけれど独学で建築を学んでいまの立場を築いたこと、働きながら勉強をして一級建築士の資格を一発で取得していることなど、それらの経験について書かれていて興味深いです。

学力と家庭事情で大学に進学できなかった彼は、建築学課に進学した友人から授業の教科書を教えてもらい大学生が4年間で学ぶことを1年以内に修得しようとひたすら勉強をしたそうです。当時、つらかったのは学んだことや建築設計に対する考え方を友人たちと議論し合うといったことができずに孤独であったことだそうです。ただ、本文には書かれていませんが、こういった自分の内面と向き合う時間があったことが独自の完成を磨くことに寄与して後の成功に繋がっているのかもしれません。

建築士の取得を目指したきっかけは設計を請け負っていたある顧客に「一級建築士ではないのですか?」と心配して聞かれたことだったそうです。 当時、アルバイトとはいえ仕事は忙しくてある日から昼食の時間も近所で買ったパンを食べながら勉強をして同僚からは不思議がられたそうです。

彼のメッセージは「”気力、集中力、目的意識” 強い思いを持つことが自らに課したハードルを越えさせる」でした。

安藤忠雄の作品を見ていると瀬戸内海の直島を思い出します。ANDO MUSEUMでも紹介されていた”光の教会”はU2のボノが見にきたいといってアイルランドからわざわざ訪ねてきて祈りを捧げたそうです。祈りを捧げたボノはその場で、歌っても良いかと一言聞いて賛美歌のアメージング・グレイスを歌ったそうです。
U2がすごく好きなわけではないですが、その歌は聴いてみたかったと思いました。

普段あまり考えないけれど、アイルランド人がわざわざ見にきたいと言うような建築が身近にあってそれをすぐ見ることができるというのは贅沢なものだなと思います。また、安藤忠雄は出身地の大阪に愛着を持っており関西にはその設計建築が多くあります。歴史に残る建築が多くある関西で生まれ育った人は少しうらやましいなとも思います。

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考える技術

考える技術
大前 研一 (著)

考える技術というタイトル通り、思考力を鍛えるためのヒントがたくさん書かれています。

「知的に怠惰な人間は生き残れない」といったメッセージとともに、論理的思考力やアイディアの発想法などいろいろな気づきを得られる内容です。

文中ではビジネスや社会から身近なものもテーマとして「こういった問題に対してどう考えるか」といった問いかけを投げています。それぞれに対して、私だったらこう考えるという思考プロセスが提示されていて面白いです。

出版が2004年のため事例が少し古くなってきていますが、まだまだ考え方の部分では役に立つ内容だと思います。郵政民営化のテーマなどは時代を感じますね。

この本を読んで、分かるのは考える力のベースとなるのが論理的思考力であるということです。最近では職場などでも馴染みがあるかもしれないピラミッド・ストラクチャーやMECEなどの考え方も文中に書かれています。

ビジネスなどの問題解決において、まず大切なのは論理的に問題を整理できること。根本的な問題の特定が出来ることが解決の第一歩になり、その後の解決策や検証が行えます。新しい仕事のキャッチアップや会議の進行においても論理的思考力は大切ですね。

「企業参謀」など大前研一の経営戦略について書かれた本は難しくて読むのが大変ですが、この本はとても分かりやすくて気軽に読めます。

初めて読んでから7年ほどが経ちますが、いまでもたまに読み返すお薦めの本です。

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裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記

裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記
山口 絵理子 (著)

フェアトレードではなく商品の優位性で途上国の生産商品を拡販するビジネスを成功させた著者の経験を綴った本です。

マザーハウスというその企業は「ジュート」という素材を使ったバッグをバングラディッシュで生産して販売するアパレル会社です。
ホームページでブランドが展開している商品も調べてみましたが、ふつうに可愛いものがたくさんありました。
店舗まで足を運んだわけではありませんが実際商品を見てみて購入者にとっては良いモノが買えて、生産国にとっては自力でビジネスを継続することが出来るという関係が成り立っていることが分かりました。

事業を始めたきっかけは学生時代に開発学という分野に出会い、途上国の援助に興味を持ったためのようです。
その後、国際機関でのインターンを経て、建前上の援助に矛盾を感じ自らアジアで最貧国のバングラデシュに渡り現地の大学院まで卒業しています。

著者の山口さん自身はある意味不器用とも見える強烈な主体性を持っていて、他人に任せても良いようなところを自分でこだわってやってしまいます。
当初、バッグのデザインはデザイナーを雇うのではなく自分でやってしまうし、バッグの生産工程を知るために職人の学校に入学して自ら生産方法も学んでいます。

そのこだわりによって関係した人に信念が伝わり、ビジネスチャンスに繋がっているように見えます。
読んでいくと分かりますが、恐らく幼少期の頃から一つのことに対する集中力が高く、柔道の練習や英語の勉強にもそれが現れているのだろうと思います。

すぐ読めて良い本なのでとてもお薦めです。

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夜と霧 新版

夜と霧 新版
ヴィクトール・E・フランクル (著), 池田 香代子 (翻訳)

多くの本がある中でもこれは特に人に紹介したい一冊です。

著者はウィーン出身の精神医学者で第二次世界大戦中にアウシュビッツ強制収容所に収容されていた経験があります。

強制収容所の経験について書かれた本というのはいくつかあって、この本が他と異なる点は学者としての観点でその経験を語っていること。

人間にとって生きる意味とは何か、意味づけすることが難しいこのテーマについて一つの見解が提示されています。

強制収容所の生活は壮絶な経験で、現代に生きる私達が想像できるようなものではなく、著者自身もそれは経験したものにしか分からないことだと語っています。

収容所生活の以前から書き溜めていた自らの論文は収容時に没収され身ぐるみ全てを失った状況で数年が過ぎ、著者はそれでも医学者という立場を見失うことなくその経験についてを分析していました。
強制労働や過酷な生活の中で数日の間だけ発疹チフスで病の床に伏している間に書かれた速記がこの本のもとになっています。

収容所で生活した被収容者は三段階の変化があったといいます。
それはこの本の目次として分けられています。

目次

心理学者、強制収容所を体験する

第一段階 収容

第二段階 収容所生活

第三段階 収容所から解放されて

この本が提示しているのは、過酷な状況下でも人は内面を犯されることなく、自ら行動を選択することで人生の喜びを見出すことが出来るということだと思います。
それは著者自身が強制収容所の生活を通して実証したことで、著者以外にも少なからずの被収容者が同様であったそうです。
著者は自ら身をもってその提唱を読者に向けて投げかけています。

 

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