スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営

スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営
山井太 (著)

「人生に、野遊びを」をコンセプトに展開するアウトドア用品製造販売メーカー社長、山井太さんの著書。この本を読んで知りましたが、スノーピークは1980年代に山井社長が経営を引き継いだ後、世界に先駆けて「オートキャンプ」というスタイルを提唱して世に広げた会社だそうです。山井社長自身はこの本を今年出版して最近は『カンブリア宮殿』にも出演してメディアへの露出が増えている経営者です。スノーピークはアウトドア用品メーカーなだけあって、社員もアウトドア好きな人が多いらしく、社長自らも年間30~60泊はキャンプでテント泊するそうです。

スノーピークの本社は新潟県三条市にあり、本社の敷地内にHEADQUARTERS Campfieldというキャンプ場を併設しています。オフィスもユニークな作りになっていて、海外からも見学に来る経営者がいるそうです。

スノーピークの経営はユーザーと向き合うことを大切にしていて、1990年代に業績が不振だった頃から「スノーピークウェイ」という顧客と社員が一緒にキャンプを楽しむイベントを開催しており、そこで直接得た声を製品や販売方法に還元しています。スノーピークが昔、代理店販売だったのを中間卸をなくして直接販売に替わったのもこの「スノーピークウェイ」で得た顧客の声がきっかけだったそうです。ユーザーと向き合う姿勢は製品開発や製品の永久保証など様々な面に現れています。

また、山井社長は論理的な経営の仕方にもこだわりがあるらしく、会員カードの登録人数を使った定量的な営業拡販方法の話は結構面白いです。いろいろとユニークな部分があり、日本から世界に向けて展開しようとしている面白い会社なので応援したいですね。

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スローターハウス5

スローターハウス5
カート・ヴォネガット・ジュニア (著), 伊藤 典夫 (翻訳)

スローターハウス5とはドイツ語の「シュラハトホーフ=フュンフ」を英訳したもので第5食肉処理場という意味の言葉で、主人公が第二次世界大戦中に捕虜として収容されていた場所の名前です。この本は主人公のビリー・ピルグリムが時間旅行をするというSF小説で1969年に出版された作品です。作中でビリー・ピルグリムは様々な時間を行き来し、また地球外生命体のトラファマドール星人に拉致されて地球から遠く離れた場所で生活したりもします。

ストーリーは主に第二次世界大戦終盤のドレスデン爆撃を中心として話が進んでいきます。ドレスデン爆撃は終戦直前の1945年にドイツ東部のドレスデン地方にたいして連合国軍が行った無差別爆撃のこと。当時、多くの戦争難民が滞在していた景観の美しかったドレスデンはこの爆撃により壊滅的なダメージを受けて、著者の表現によるところのでこぼこの月面のようになったそうです。

この本では著者自身が捕虜として経験したドレスデン爆撃のことが小説のなかに反映されています。戦争とSFという一見よくわからない組み合わせですが、皮肉のこもった表現は歴史的背景を感じます。

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プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか

プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか
P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)

マネジメントの権威であるドラッカーの思想を読みやすくまとめた本。この本ではこれまでのドラッカーの著書や論文から、特に個人が知識労働者として成果をあげるための記述に絞って書かれた編著です。ドラッカーの本はそもそも高尚で取っつきにくいという印象がありますが、この本はサブタイトルが「はじめて読むドラッカー」というだけあって読みやすいです。

この本を最初に読んだのは、まだ社会人になって間もない頃でした。当時は、たしかに良いことは言っていそうだが仕事でどう活かして良いか分からないというのが感想だったような気がします。仕事を始めて5年以上が経つ今になってあらためて読み返してみたところ、実務で悩んでいる場面や経験を思い出させる記述がいくつかあって初めに読んだ頃に比べると自分自信の目線も少し変わってきたのかもと思います。

すぐに気づかなくとも、経験値を持って読み返してみると新たな洞察を得ることができる。そんな内容の本であるため、身近において機会ある度に読み返してみると良いかもしれません。営利・非営利の組織に関わらず知識により成果をあげる仕事をする上で重要な気づきを得られるお薦めの本です。

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LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
シェリル・サンドバーグ (著), 川本 裕子 (その他), 村井 章子 (翻訳)

フェイスブックCOOが書いた女性のリーダーシップについての本。著者は二児の母でありつつもこれまでGoogleやフェイスブックで幹部として働いてきていて、この本では社会で女性が活躍することについてがテーマになっています。

彼女が語る経験から、これまで明確に気にしたことはなかったものの、社会には男女の役割分担について根強いステレオタイプが存在することが分かります。働き始める前も後も多くの女性は自分の生き方や成功について固定観念を刷り込まれて、本来発揮できる力を出せていないということが定量的な情報と合わせて説明されています。

この本に書かれていることを考えてみると、世界はその約半分のポテンシャルを活かしきれていないことになります。

本のなかでは女性とリーダーシップ以外にも、彼女のこれまでの仕事についてと出産や子育てをどのように行ってきたかも多く語られています。成長企業のCOOがどのようなキャリアステップを踏んできたかという面でも参考になる本です。

恐らく、女性である以前にリーダーとしての彼女がどのような存在であるかを読み手に考えさせることができていたら、この本の趣旨は半分達成できているのではないかと思います。単純に女性COOとしてではなく、一人のリーダーとして自信を持てない人々へのエールと、チャンスを得る者に勇気を与えるお薦めの本です。

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マイケル・ポーターの競争戦略

マイケル・ポーターの競争戦略
ジョアン・マグレッタ (著), マイケル・ポーター(協力) (その他), 櫻井 祐子 (翻訳)

マイケル・ポーターとともに長く仕事をした著者が、ポーターの競争戦略論についてシンプルにまとめたエッセンシャル版の本。「競争優位の戦略」などの難解な長編を読むことなくマイケル・ポーターの戦略論について知ることができます。

ポーターが戦略論の研究を始めるきっかけは、企業の収益性に違いがあるのはなぜかという問いから始まっているそうです。そのため、 戦略論を知ることで企業毎に収益性が異なる理由を探ることができます。

企業や非営利組織は「最高」を目指すのではなく、独自の価値を産み出すポジションを見つけ出すべきであることや、五つの競争要因、バリューチェーン、トレードオフなどのどこかで聞いたことはありそうなキーワードについて紹介されています。

本のなかではサウスウエスト航空やイケアなど実際の企業も例にあげられています。イケアは日本にも進出していて、馴染みある人にとっては分かりやすい説明になっているのではないかと思います。小難しくてなかなか触れる機会の無い経営戦略論について、分かりやすく説明がされたお薦めの一冊です。

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ブランドで競争する技術

ブランドで競争する技術
河合 拓 (著)

事業再生を主な対象とするコンサルタントによるブランドをテーマとした本。著者は元々、商社での事業経験があって繊維原料の貿易関係に従事していました。その関係もあって、その後のキャリアではアパレル関係の事業再生に強みを持っているそうです。本書のテーマについても、主にアパレル業種の事例紹介が多く含まれています。

著者の語るブランドの要素は「機能価値」「サービス価値」「イメージ価値」の三つが重要で、本の中ではそれぞれについて実際の事業ケースを交えて紹介しています。また、それら重要な要素に加えて企業が継続的な革新を産むための組織設計についても独自の理論を紹介している点は興味深いです。ユニクロの事例を通した流通改革の考察や百貨店業界の構造問題についての紐解きは示唆に富んだ内容になっています。

現場に入り込んでの事業再生を生業としているだけあって、第9章での業務改革に関する事例紹介はその難しさと実務では信念をもって挑むことが重要であるということが伝わってきます。 実務と理論をかけあわせた経験則が綴られたおすすめの一冊です。

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モリー先生との火曜日

モリー先生との火曜日
ミッチ・アルボム (著), 別宮 貞徳 (翻訳)

人が普段あまり意識することのない「死」についてをテーマに扱った本。

スポーツコラムニストとして活躍していた著者は仕事に没頭して、物質的な生活に溺れた日々を過ごしていました。ある日、テレビのインタビュー番組にかつて大学時代の師だったモリーが出演しているのをみかけます。モリーはALSという不治の病に犯されていました。

かつてはお互いが友人であると思い合う関係にあった師の姿を見た著者は、学生時代に受けた講義やモリーから得た学びについてを思い出し、師を訪ねることにします。十数年間連絡を取らなかったことを後ろめたく感じて、戸惑いながら訪ねてきた著者をモリーは暖かく受け入れます。

こうしてモリー先生との火曜日の講義が始まります。

訪ねてくる全ての人とは会うことが出来ない中、残りの命が限られた中、モリーは「生きる意味」について著者に再び語りかけることになります。死と直面しても恐れることなく、そこから得られる気づきを伝えようとするモリーの講義は著者に大きな影響を与えます。著者は同じく重い病におかされていた自身の家族との関係を見つめなおすことにもなります。

著者自身の生活も大きく変わったその講義が綴られたこの本からは、「死」と向き合うことで人生における物事の優先順位は大きく変わるということが分かります。

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マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった
ジョン ウッド (著), 矢羽野薫 (翻訳)

途上国の学校設立や図書館開設など教育支援を行うNPOルーム・トゥ・リード設立者の本。著者は元々、90年代にマイクロソフトの幹部社員として働いていた経験があります。成長著しかった時代のIT企業で働いていた著者は超多忙な日々を送っていました。

その仕事の合間にネパールを旅した際、偶然訪れた小学校で数冊の本がおさめられた図書館に出会います。しかし、その図書館では本棚は厳重に鍵がかけられた部屋の中にあり、子供達は本と触れ合うことができないようになっていました。ネパールの山奥では、本は貴重で子供達が傷つけないように鍵をかけられていたのです。

子供の頃に図書館で多くの本と触れ合った著者は、読書と教育の大切さを子供達にも伝えるために、家族や友人の協力を得て数千冊の本をネパールの学校に寄付しました。そのきっかけから、その後会社を辞めNPOを立ち上げて現在では1000校を越える学校と10000を越える図書館を設立しています。

ルーム・トゥ・リードが特徴的なのは活動を具体的な数字にして支援者に分かるようにしているところです。どのような数字で示されているかは実際に本やホームページで調べてもらったほうが伝わりやすいと思うので割愛します。読書や教育の大切さというのはとても共感できるテーマで、NPO運営のビジネスモデルとしても興味深い内容が書かれていて多くの人にお薦めしたい一冊です。

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オレたちバブル入行組

オレたちバブル入行組
池井戸 潤 (著)

話題になったドラマ 『半沢直樹』の原作本。バブル崩壊前後の銀行が強い力を持っていた時代から、不良債権という言葉が聞き慣れる頃にかけて大銀行に就職したバブル入行組を描いた小説。

上司に裏切られた中間管理職の半沢直樹による債権回収と裏切った者達の復讐の話。話のオチは本の半ばで判明していて、残り半分は主人公の痛快な復讐劇が描かれています。

普段あまり関わりのない銀行の法人営業がどのような仕事で、内部がどのような組織になっているのか知れるという意味でもこの本は面白かったです。実際にバブル入行だった世代の人はここで描かれているような組織事情の中で苦労をしたのかもしれません。

ドラマのほうは見ていないので、本だけ読んで知った気になっているかもしれませんが、なかなか面白い内容でした。

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ソーシャルトラベル 旅ときどき社会貢献。

ソーシャルトラベル 旅ときどき社会貢献。
本間 勇輝 (著), 本間 美和 (著), 鈴木海太(株式会社ELENA Lab.) (イラスト)

結婚後に、勤めていた会社を退社して、二人で世界を旅して、行った先で少しの社会貢献をした夫婦の本。ソーシャルトラベルと名付けたその旅のスタイルが写真とともに紹介されていて、普段見ることのできない世界があることを知れます。

この本の面白いところは二つあって、ひとつは世界一周の旅をしながら現地の人のために何かをするという、旅と社会貢献が混ざったことができるということが紹介されている。また、旅先で出会った人々の文化や考え方が綴られていることです。

インドのブッダガヤにある学校で机と椅子を作ったり、ネパールのポカラで出会った女性が経営するショップの商品をブログで売ったりと一つ一つのプロジェクトは大きなものではないけれど、そこにいる人々と繋がることができています。

その活動は「ひげとボイン」というブログに記録されていて、いまでも見ることができます。
http://h-b.asia/about-this-blog/

最初は小さなことがきっかけで始めた社会貢献が、最終的にはブログ読者も巻き込んで活動をしていて、二人とも成長しながら旅を続けたことが知れるのもこの本の良いところでした。

こういう旅の仕方もあるというのが興味深く、 これから旅をしようと思っている人にはとてもお薦めの一冊です。

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